負のエントロピー?

突然ですが理想気体エントロピーを求めてみましょう。

理想気体分配関数は、
Z=\frac{1}{h^{3N}}d^{3N}pd^{3N}p\exp(-\beta \frac{p^2}{2m})
=V^N(\frac{2\pi m}{h^2\beta})^{3N/2}

自由エネルギーは、 F=-\log(Z)/\beta これからエントロピーは、
S=\frac{\partial F}{\partial T} = k_B(\log(V(\frac{2\pi m k_B T}{h^2})^{3/2})-1)

この表式を見ると温度を下げていくとエントロピーが負になってしまうように見えます。
また、T=0ではS\to \infty となってしまいます。

一見不合理なこの結果は、不確定性関係を忘れてしまったことによります。
logの中身を見てみると、分子にV m k_B T \approx \Delta x^3\Delta p^3分母に hが出て来ています。
不確定性関係 \Delta p\Delta x > h の制限を考慮すれば、単純にT\to 0と したからといってlogの中身を0にすることは出来ないわけです。

これは分配関数を計算する際に出てきた係数 h^{3N}位相空間での状態1つに対応する体積だったことからも理解できます。

エントロピーが負になるという現象は確率変数が連続的な値を取り得る場合に見られて例えばDifferential entropy - Wikipediaに例が載っています。